仏壇の蒔絵 曹洞宗 編
道元大師 「行脚修行」
紅西省に廬山があり、そこは天下の景勝である。
この山水を賞玩しながら行脚修行の第一歩を踏まれた。
暗闇の風がさっと吹いて、樹を動かしたかと思うと恐ろしい猛虎が欄々とした眼を怒らせ牙を鳴らして近寄ってきた。
大師は静かに近くの石の上に端座された。
持っていた杖が龍と化してその虎を追い払い無事であられた。
道元大師 「白連の葉の上に座る如来様」
宝慶三年大師二十八歳の時如浄禅師より正法眼蔵を伝え授かられ、早く日本に帰って大法(仏の説教)を世間に普及させようと招宝山のふもとを船出された。
航海を初めて何日目かに空が急に曇り、風が激しくなり、波はたちまち荒れ、船は何度か沈没しそうになった。
その時大師は静かに舷頭に正座し、一応に観世音菩薩を頂礼して唱えた。
忽ち一同の光明が黒雲の間から輝き渡ると暗雲区湧の中に白連の葉に座られた観世音菩薩がきらきらと輝いて現れた。
道元大師が合掌、頂礼すると、風がおさまり大波も止み、船は無事港に着くことができた。